第3章 重なる夜
タ「……そんな声で俺を呼ぶな。余計に、止まれなくなる。」
耳元に落とされた囁きに、女の体が強く震える。
その反応すら、2人をさらに狂わせていった。
なとりはすでに衝動に飲み込まれ、女の体を求めることしかできない。
タツヤもまた、余裕を捨て女の熱に引きずられるようにして深く沈んでいく。
抗う言葉は虚しく空気に溶け代わりにあらわになるのは震える声と、熱に乱れる吐息だけ。
そして女は2人の狭間で、どうしようもなく揺さぶられ溺れていく――。
ベッドの上に押し倒されたまま、女はなとりの荒い呼吸に飲み込まれていった。
熱に浮かされたようなキスは止まらず、唇を塞がれたまま何度も呼吸を奪われる。
舌を絡められ、口内を貪られるたびに背筋に電流が走るような痺れが走り息を漏らさずにはいられない。
「……ん、んぅ……っ。」
か細い声は、なとりの唇に吸い込まれるように消える。
なとりは、まるで我慢がきかない子供のようだった。
女の体に触れる手は震え強引で、だが切実だった。
肩から二の腕へ、そして胸元へと這う指先は落ち着きがなく触れた途端にその熱を求めて掴み取ろうとする。
な「……もっと……欲しい……。」
唇を離した一瞬、なとりが低く呻く。
瞳は潤み理性の欠片もなく、ただ女を飲み込みたいと訴えていた。
「なとり……っ、や……。」
女が震える声で抗う。
しかし、その抗いすら甘美なものに聞こえてしまうほど、なとりは余裕を失っていた。
対照的に、タツヤは余裕の笑みを浮かべていた。
女の腰を撫でながら、その震えを確かめ耳元に唇を寄せる。
タ「……可愛い声だな。嫌だって言いながら、体は逆らえない……。」
低い囁きに、女の体が跳ねる。
なとりが乱暴にむさぼるのとは違い、タツヤの指先はなぞるように焦らすように肌を撫でる。
その優雅な手つきが余計に女を追い詰めていく。
「タツヤ……いや……お願い……。」
掠れる声がその名を呼ぶ。
縋るような響きに、タツヤは喉を鳴らす。