第3章 重なる夜
指先で優しく宥めるように触れながらも、その奥に潜む欲望は抑えきれず、じわりと侵食していく。
なとりは唇を離さず、時折むさぼるように舌を絡め女の声を奪う。
「やだ……いや、だって……。」
懇願の声は震え、涙に濡れる。
だが、2人はその言葉を拒絶とは受け取らなかった。
むしろ、酔いと熱に翻弄されながら必死に縋る女の姿を“愛らしい”としか思えなかった。
な「もう……逃げられない。」
なとりの吐息が耳を灼く。
「……タツヤ、お願い……。」
女のかすれた声がその名を呼ぶ。
タツヤの手が止まる。
だが次の瞬間、唇に浮かんだ笑みは余裕と欲望の入り混じったものだった。