第22章 理性を閉じ込めて
乱れた息が重なり合い、熱が肌にまとわりつく。
最後の衝動に突き動かされるように、なとりは腰を深く押し込んだ。
身体の奥で震える感覚が絡みつき、2人の境界を曖昧にしていく。
「……っあ、もう……だめ……っ。」
女のかすれた声が耳を震わせる。
その響きに導かれるように、なとりは堪えきれず力強く果ててしまった。
熱が流れ込む。
全身の力が抜けるほどの解放感と、同時に押し寄せる切なさ。
彼女を抱きしめながら、なとりは目を閉じた。
腕の中で小さく震える身体。
その瞼は重く閉じられ、呼吸は浅く乱れたまま。
やがてそのまま、意識を手放してしまう。
な「……寝たの……?」
囁きは答えを返さない。
ただ、安らかな寝息と甘く湿った空気が部屋に満ちている。
なとりはしばらく、彼女の髪を撫でていた。
その頬は涙と汗に濡れ、無防備で――
愛おしくて、苦しい。
な「……俺、ずるいな。」
小さく吐き出した独り言。
彼女が気づかないのを良いことに、欲望と嫉妬をぶつけてしまった。
それでも、どうしても手放せなかった。
布団をかけ直し、彼女の乱れた髪をそっと耳にかける。
眠りに落ちたその顔を、食い入るように見つめる。
“……本当に、あの人のこと好きなの?”
さっき問いかけた言葉が、胸の奥でまだ疼いていた。
答えは聞けなかった。
けれど――
今、この腕の中で眠っているのは紛れもない事実。
名残惜しく唇を落とす。
額に、頬に、そっと触れるように。
彼女は微かに眉を寄せただけで、目を覚まさなかった。
な「……おやすみ。」
かすかな声を残して、なとりはゆっくりと立ち上がる。
軋むベッドの音にさえ気を遣いながら、足を床につける。
背を向ける瞬間、胸の奥が引き裂かれるように痛んだ。
彼女を1人置いて部屋を出るのは苦しい。
それでも今はこれ以上傍にいると、余計に自分を抑えられなくなる。
ドアノブに手をかける。
振り返れば、白いシーツに包まれて眠る彼女。
頬に残る赤み、無意識に握りしめたシーツの皺。
そのすべてが、先ほどの熱を思い出させた。