第22章 理性を閉じ込めて
身体を絡め合う熱の中で、彼の声が耳に落ちる。
低く、震えるような響き。
な「……こんなに好きなのに。」
その言葉は苦しさを孕んでいて、胸の奥に重く沈む。
そして続けざまに突き刺すような問いかけ。
な「……本当に、あの人のこと好きになったの?」
彼の唇が耳の裏をかすめながら静かに、しかし逃がさぬように問われる。
息が詰まり、言葉を返す余裕もない。
答えられない沈黙のまま布団の下で脚を割られ、重く覆いかぶさる熱。
なとりの手が腰を強く引き寄せた。
な「……俺を見てよ。」
囁きと同時に、ゆっくりと、だがためらいのない動きで身体の奥深くへと繋がっていく。
ずぷり、と熱が押し込まれ喉の奥から声が漏れた。
「や……っ、あ……っ。」
涙混じりの声を彼は逃さず耳元で受け止める。
その瞳は必死で、嫉妬と愛情が混じり合って揺れている。
な「……俺が中にいるの、わかる? これで、まだあの人のこと考えるの?」
腰を深く押し込まれるたびに、返事は甘い声に変わってしまう。
「ちが……っ、わたし……。」
な「違うなら、ちゃんと証明して。」
その言葉と共に、さらに奥へ、奥へと突き進んでくる。
熱が押し寄せ、逃げられない現実に絡め取られる。
シーツを握りしめる手が震える。
背中を抱きすくめる腕は決して離さず、痛いほどの力で繋ぎ止める。
な「……俺だけを見て。じゃないと、壊れそうなんだ。」
切実な声が、胸の奥を締め付ける。
その必死さに、否定の言葉はもはや続かない。
ただ、深く貫かれるたびに声が零れ落ちる。
「あ……ん、や……っ。」
熱に呑み込まれ、涙に濡れた瞳で彼の顔を見上げてしまう。
なとりはその表情を見て、さらに深く、荒々しく求めてきた。
な「……やっぱり俺が良いんだろ? こんな顔、俺にしか見せないくせに。」
嫉妬が愛情に変わり、愛情が欲望に火をつける。
彼の全てがぶつけられ、女の身体は震え続けた。
心の奥で――
本当に好きなのは誰なのか。
答えが出せぬまま、ただ彼の熱に縛られていった。