第2章 譲れない想い
タ「呼ばれると、余計に抑えられなくなるんだよ。」
なとりが唇を離し、息を荒げながらもなお女を見つめる。
な「俺からも……離れないでほしい。」
女は答えられない。
ただ涙のように熱を滲ませながら、翻弄される自分の身をどうすることもできなかった。
タツヤの余裕めいた囁きと、なとりの切迫した熱。
2人の想いが絡み合い、部屋の空気は濃密に張り詰めていく。
女の酔いで過敏になった身体は触れられるたびに反応し、2人の言葉に心を揺さぶられる。
タ「……かわいいな。」
な「本当に……たまらない。」
その囁きが、熱をさらに加速させていく。
逃げ場はもうなかった。
酔いに霞む意識の中で、ただ2人の想いに飲み込まれていくしかなかった。
女は、まだ頭の芯がふわふわと揺れていた。
アルコールのせいか、それとも2人の熱に煽られているのか区別はつかない。
ただ、重ねられた唇と熱を帯びた吐息に全身が敏感に反応してしまい震える指先でシーツを掴むことしかできなかった。
なとりの口づけは深く、容赦がなかった。
舌を絡め、呼吸すら奪い取るような熱に女は逃げ場を失う。
押し倒された体の上から、硬い体温が覆いかぶさり胸の奥まで焼けつくような感覚を与えてくる。
酔いで過敏になった体は、どんな小さな刺激も強烈に受け止めてしまう。
指先が頬をなぞるだけで、唇が首筋を掠めるだけで呼吸が乱れ視界が滲んでいく。
「タツヤ……嫌、だって……。」
縋るように名を呼ぶ声はか細く、抗う力を失っていく。
タツヤはその声に、ほんのわずか眉を寄せた。
だが、震える女の体を見て息を呑む。
逃げたいのに逃げられない、抗いたいのに抗えない。
酔いと快楽に絡め取られ無防備に震えるその姿が、あまりにも愛おしく同時に残酷なほどに艶やかだった。
タ「……かわいいな。」
タツヤが零す。
「ん、……っ。」
女は首を振るが、その仕草すら煽情的でタツヤの喉を鳴らせた。
なとりもまた、荒い息を吐きながら囁く。
な「……全部、感じてるくせに……かわいすぎる……。」
2人の声が重なり、女の耳を犯していく。
意識は霞み、体は熱に溺れ息をすることさえ苦しくなる。
シーツを掴む手が力を失い、ただ2人の間に挟まれて震えるしかなかった。
タツヤの手が、女の震える腰を撫でる。