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上書きしちゃった

第20章 ほどける夜


打ち上げ会場は近くの大型居酒屋を貸し切ったフロアだった。

色とりどりの料理がテーブルに並び、グラスが触れ合う音と笑い声が絶えない。

熱気が冷めないまま出演者同士が自然と輪になり、互いのステージを労っていた。

女はキタニやなとりの隣に座りながら、少し緊張気味にグラスを手にしていた。

普段は画面越しにしか見ない歌い手たちが目の前で談笑している。

その事実だけで胸が高鳴る。

そんなとき――。

歌「……あの、もしかして。」

背後から声をかけられた。

振り返ると、そこに立っていたのは女がずっと動画で追いかけてきた人気歌い手だった。

柔らかい雰囲気をまとい、ファンを魅了する澄んだ歌声の持ち主。

女は一瞬、言葉を失った。

「え、あの……。」

歌「やっぱり! 今日、同じステージでご一緒できて嬉しかったです。実は、前から動画も聴いてました。」

――自分の大ファン?

思わずグラスを取り落としそうになり、慌ててテーブルに置く。

「……わ、わたしの、ですか?」
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