第19章 夜の衝動
タ「……お前、これ……なんで見せなかった。」
「……怖かった。どうすれば良いか分からなくて。」
声が震え、喉が詰まりそうになる。
指先も冷たく強張っていた。
「ストーカー相手は……たぶん、さっきの人。」
そう告げた瞬間、キタニの瞳がぎらりと光った。
タ「やっぱり、あいつか。」
怒りを含んだ声は低く鋭く、部屋の空気を震わせる。
タ「なんで言わなかった。俺やなとりがいるだろ。黙ってたって、状況は悪くなるだけじゃねぇか。」
「……言ったら、迷惑かけると思ったの。2人とも忙しいし……。」
言葉の最後は弱々しく途切れた。
キタニは乱暴に髪をかきあげ、しばらく黙り込む。
重苦しい沈黙が流れ、女は息を潜めて彼の横顔を見た。
やがて、彼は拳を握りしめたまま低く言った。
タ「……俺が忙しいとか、そんなこと関係ねぇだろ。お前に何かあったら、それこそ意味ねぇんだよ。」
その言葉に、胸の奥が熱くなる。
けれど同時に、自分が秘密にしていたことでキタニを傷つけてしまった罪悪感がさらに強まった。
「ごめん……。」
小さく謝る声が震える。
キタニはその顔をしばらく見つめ、それから深くため息を吐いた。
タ「……謝るな。悪いのは全部、あのバカだ。」
スマホをテーブルに置き、彼は画面を食い入るように睨む。
タ「“友達”とか、ふざけたこと言いやがって。完全にストーカーじゃねぇか。……俺が直接、叩き出してやる。」
「待って……危ないよ、そんなことしたら。」
慌てて袖を掴むが、彼の表情は険しいままだった。
タ「危ないのは、お前が1人で抱えてたことだろ。あいつが家にまで入り込んできて……次は何するか分かんねぇ。今度こそ警察に行く。」
「……警察。」
その言葉に、女は不安げに瞬きをした。
彼の地位や仕事に影響しないだろうか――
そんな思考が頭をよぎる。
けれど、それ以上に自分の安全が脅かされていることも痛感していた。
キタニは女の肩を掴み、目を合わせる。