第19章 夜の衝動
その瞬間、なとりもまた彼女の中で深く果て荒い息を吐きながら彼女の身体を抱きしめ続けた。
しばらくは互いに声も出せず、ただ熱と鼓動だけが部屋に響いていた。
やがて呼吸が少し落ち着いた頃、なとりはまだ繋がったまま彼女を抱きしめ耳元で囁いた。
な「……やっぱり、酔うと隠せなくなるんだな。ほんとの気持ち。」
返事はなかった。
けれど彼女がそっとなとりの胸に顔を埋めた仕草が、すべてを物語っていた。
なとりは小さく笑い、髪を撫でながら目を閉じた。
その夜、2人は熱の余韻に包まれながら深く結ばれたまま眠りについた。
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キタニも、なとりも、ツアーで数日間家を空けることになった。
2人と一緒に暮らし始めてから常に誰かの気配があるのが当たり前になっていた女にとって、広い部屋に自分1人だけ残されるのは思いのほか寂しいものだった。
夜、リビングのソファに腰を沈めテレビを点けても心は満たされない。
「……一緒に住んでる意味、ないじゃん。」
ぽつりと口にした言葉は、誰にも届かず空気に溶けていく。
結局、2人が帰ってくるのを待つだけの日々になるのだろうと分かっていても置いていかれたような孤独感が胸を締め付ける。
気分を変えようと彼女はマイクと機材を取り出し、自分の歌を録音し始めた。
歌っている間だけは孤独を忘れられる。
声を張り上げ、メロディに身を委ねると不安も寂しさも薄れていくような気がした。
イヤホンをつけ、モニターから流れる自分の声に耳を澄ませる。
しかし録音を終えた瞬間、また静寂が押し寄せてきた。
「はぁ……。」
ため息を吐き、スマホを手に取る。
SNSの通知が1件光っていた。