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上書きしちゃった

第18章 密室に沈む


な「うわ、完全に酔っぱらってるじゃん。」

彼は苦笑しながら近づく。

グラスを取り上げようとすると、女はむっとした顔をしてそれを抱え込んだ。

「まだのむの……。」

な「いやいや、もう十分だって。これ以上飲んだら倒れるよ。」

取り上げようとするたびに、彼女は子どものように首を振る。

そのやり取りの最中ふいに女がぐらりと身体を傾け、なとりの胸に倒れ込んだ。

な「わっ。」

慌てて抱きとめる。

華奢な体がずっしりと重みを預けてきて、彼の心臓が不意に高鳴った。

「……ねぇ、なとり。」

見上げてくる瞳は潤んでいて、酔いのせいかやけに色っぽい。

「なんでそんなに優しいの……?」

な「え?」

不意を突かれ、言葉に詰まる。

「タツヤも優しいけど……なとりは……なんか、ちがう……。」

彼女は胸元に顔を埋め、子猫のようにすり寄ってくる。

な「ちょ、ちょっと……。」

なとりは戸惑いながらも腕を放せない。

強く拒んだら彼女が傷つきそうで、ただ困ったように笑うしかなかった。

「ねぇ、あったかい……。」

酔っ払いの声がくすぐったくて、心を乱す。

な「お前……ほんと、飲みすぎ。」

なとりはため息をつきながら、彼女の背中にそっと手を回した。

な「俺にベタベタしてるの、明日になったら覚えてないんだろ?」

「うーん……わかんない……。」

言葉は曖昧で、身体は完全に預けられている。

胸の鼓動が速くなるのを必死に隠しながら、なとりは彼女の頭を撫でる。

な「……ずるいな。そんな顔されたら、断れないじゃん。」

ソファの横にしゃがみ込み、グラスをテーブルに戻す。

彼女の髪からほのかなシャンプーの匂いとアルコールの香りが混ざり合って漂い、鼻先を刺激した。

な「ほんとにさ……俺、どうしたら良いの。」

小さく呟いても女はすでに半分眠りに落ちているようで、くぐもった寝息を立て始めていた。

な「……仕方ないな。」

なとりは静かに立ち上がり、彼女の身体を抱き上げる。
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