第2章 譲れない想い
女は混乱したまま、2人の間でどうすれば良いのか分からない。
「ちょ、ちょっと待って……2人とも、何してるの……。」
声は震え、涙すら滲んでいた。
しかしキタニは彼女の手を取り、あえてなとりに見せつけるように唇へ軽く触れさせた。
タ「……こいつを喜ばせられるのは、なとりだけじゃないってことだ。」
挑発的な言葉に、なとりの目が燃える。
な「……だったら、証明してくださいよ。どっちが彼女を本当に大事にできるのか。」
部屋の空気は一気に張り詰めた。
女は2人の間で、ただ苦しそうに唇を噛みしめて俯くしかなかった。
その手を強く握るキタニと、真っ直ぐ見つめるなとり。
どちらの熱も重すぎて、逃げ場はもうどこにもなかった。
タツヤの腕に抱えられ、女はふわりと宙を舞ったような感覚に包まれた。
アルコールで霞んだ意識のせいか床からベッドへと移されるまでの一瞬が、やけに長く感じられる。
シーツの柔らかさが背中を受け止め、同時に胸の鼓動が急速に早まった。
タ「……大丈夫か?」
耳元で低く囁くタツヤの声。
その響きは優しいのに、どこか独占欲を帯びていて女は小さく頷くことしかできない。
だが次の瞬間、視界に割り込むようにしてなとりが身を乗り出してきた。
な「……ごめん、もう……我慢できない。」
彼の吐息と共に、唇が強く重なる。
深く、熱く、ためらいを知らない。
「ん……っ。」
女は反射的に身を捩ったが、タツヤの手が腰を支えて逃げ道を塞ぐ。
彼はどこか余裕を漂わせながら、なとりが口づける様を横から眺め指先で女の髪を撫でた。