• テキストサイズ

上書きしちゃった

第18章 密室に沈む


観覧車の小さなゴンドラの中、張りつめた空気を和らげようと、かやはおそるおそるなとりに手を差し伸べた。

「……手、つなご?」

その言葉に彼は一瞬きょとんとした表情を浮かべ、すぐに柔らかな笑みを作った。

だが次の瞬間その笑みの奥に、どこか影のようなものがちらりと覗いた。

な「……優しくすると、痛い目見るよ。」

囁くように言いながら、そのままかやの手を強く掴む。

引き寄せられた腕に身体がつられ、バランスを崩す。

「きゃ……っ!」

ゴンドラがわずかに揺れ、重力に抗えずかやはなとりの胸に倒れ込んだ。

その拍子に背中がシートに押しつけられ、彼の腕が素早く腰を抱きとめる。

倒れ込んだ形のまま、距離はゼロに縮まった。

な「……ほら、言ったでしょ?」

目の前で囁かれる声。

いつもの人懐こいトーンとは違い、低く熱を帯びている。

息が触れ合うほど近い距離に心臓が跳ねる。

「な、とり……っ。」

呼ぶ声は震えていた。

視界の端に、無言で座るキタニの姿が映る。

彼はじっとこちらを睨みつけるように見ていた。

帽子の下の目は暗く光り、何かを堪えるように拳を握り締めている。

「……離して。」

小さく声を上げても、なとりは笑みを崩さない。
/ 247ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp