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上書きしちゃった

第17章 閉ざされた扉の向こう


待ち合わせは街中のショッピングモール前。

休日の人混みの中、2人の姿はすぐにわかった。

先に来ていたのはキタニ。

黒いキャップを深く被り、マスク越しにこちらを見つけて軽く顎を上げる。

数分遅れてなとりが現れた。

ラフなパーカー姿で、片手を大きく振りながら駆け寄ってくる。

な「お疲れ様です! 2人とも待たせました?」

タ「別に。」

キタニは短く答え、なとりは

な「そっけないんですけど!」

と笑った。

かやは慌てて間に入り、笑顔を作る。

「じゃ、行こっか。今日は1日、遊び尽くそう。」

──────────────

まず向かったのは映画館。

ポスターの前でどの作品にするか相談していると、なとりが

な「これ観たいです!」

と指差したのは人気のラブコメ映画だった。

タ「いや、俺はこっち。」

キタニが示したのは重厚な社会派ドラマ。

2人の視線がかやに向けられる。

決めるのはかやだ。

「えっと……今日は軽い気分だから、ラブコメの方かな。」

そう答えると、なとりが嬉しそうに笑いキタニは小さくため息をついた。

上映中、なとりはちょくちょく小声で感想を囁いてきて、そのたびに笑いが堪えられなくなる。

隣のキタニは無言だが、時折こちらを一瞥する視線が突き刺さる。

映画が終わると、なとりが

な「ポップコーンまだ残ってる?」

とかやの手元を覗き込んできた。

指先が触れそうな距離にドキリとする。

その瞬間、反対側にいたキタニが何気ない仕草でかやの肩に手を置いた。

タ「行くぞ。」

低い声が耳に落ち、かやは息を呑む。
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