第17章 閉ざされた扉の向こう
タ「……否定できなかったな。」
額を彼女の額に押し当て囁く声は低く、しかしどこか満足げだった。
タ「……やっぱり、お前は俺のものだ。」
彼女は涙に濡れた目で彼を見つめる。
否定の言葉はもう出てこなかった。
ただ、震える吐息と熱に支配された身体が彼の言葉を肯定していた。
ベッドの上で絡み合ったまま2人の夜は静かに、しかし濃密に深まっていった――。
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久しぶりに訪れた完全なオフ。
携帯を手にしたまま、何をしようかとぼんやり考えていた。
映画でも観に行こうか、それとも1人で街をぶらついてみようか。
そんな時、ほとんど同時に通知音が鳴った。
画面を見て思わず息を呑む。
――差出人は“キタニ”と“なとり”。
どちらも内容は似ていて、【せっかくだからデートでもしない?】というもの。
文章の温度差はあった。
キタニは素っ気なく【暇なら出かけないか】と1行だけ。
なとりは絵文字や軽い調子で【久しぶりにゆっくり遊ぼうよ】と送ってきていた。
胸の奥がざわめく。
どちらか1人を選ぶなんてできない。
選んでしまった瞬間、残された方を傷つけることになる。
――結局、かやは【2人とも一緒に遊ぼう】と返していた。
返事を送った数秒後、それぞれから既読がつく。
タ【……了解】
キタニは短く一言。
な【良いじゃん! じゃあ3人でデートだね!】
なとりはすぐにノリよく返してきた。
スマホを置いた瞬間、心臓が跳ねるように高鳴る。
楽しみな気持ちと、不安が入り混じっていた。