第16章 揺れる境界線
タ「……俺だけを見ろ。他の男なんか見んな。」
耳元に囁かれる声は怒りを孕みながらも切実で、嫉妬に焼かれた愛情そのものだった。
タ「俺のものだって、わからせてやる。」
言葉と同時に彼の唇が首筋に落ち、噛むように跡を刻んでいく。
「……っあ……。」
小さな声が漏れ、彼の指先が敏感な肌をなぞる。
逃れようとする意思は薄れ、代わりに抗えない熱が身体を支配していく。
玄関先の冷たい空気と彼の熱が入り混じり、頭が真っ白になる。
鍵も靴もそのままに、ただ壁と彼の体に挟まれ身動きもできない。
タ「……お前の全部、俺にしか許さないで。」
深く噛みしめるように囁かれ、再び唇を奪われた。
拒めない。
それは恐怖ではなく、彼の激しい独占欲に飲み込まれる心地よさだった。
彼の嫉妬に支配されるまま、玄関先は次第に甘く危うい熱に満ちていった――。
玄関の冷たいタイルに押し付けられ、息も絶え絶えの彼女の耳元でキタニの低く掠れた声が響いた。
タ「否定する練習だ。俺に、抵抗できるか、見せてみろ。」
その言葉に胸がざわつき、全身の血が一気に沸騰するのを感じた。
意味は分かる。
否定する、声を出す、突き放す――
でも身体は言うことをきかず、熱い吐息と共に反応してしまう。
「……タツヤ……っ。」
かすれた声が、彼の耳に甘く流れ込む。
キタニはその声を意図的に無視するかのように、荒々しく身体を押し寄せた。
腕で両手を押さえつけ、逃げられないように固定する。
狭い玄関に2人の体温が渦巻き、息が詰まるほど密着する。
タ「俺に逆らえると思ってるのか?」
唇が首筋に落ち、荒く舌が這いまわる。
小さな声が漏れるたびに指先が胸をなぞり、身体の芯まで熱が染み渡る。
彼女の手が必死に腕を押し返そうとしても力強く抑え込まれ、動きを封じられる。
「……いや……っ、やめ……。」
否定の言葉が漏れるたび、キタニは低く唸り声をあげる。
その声は怒り混じりだが、どこか楽しげで彼の興奮をさらに煽る。
タ「そうだ、もっと声を出せ。俺の前で否定してみろ。」
唇が耳朶をかじり、肩を押さえつける手が腰に回る。
布越しに感じる肌の柔らかさが、理性を粉々に打ち砕く。