第16章 揺れる境界線
バ「やあ。」
笑みを浮かべ、当たり前のように部屋へ足を踏み入れる。
「ちょっと、入っちゃだめ……!」
思わず立ち上がり声を上げた。
バ「平気平気。ちょっと話したいだけだから。」
軽い調子の声。
その裏に、ぞわりと背筋を冷やすような圧が潜んでいた。
「マネージャーが外に……。」
言いかけた瞬間、彼は扉を閉め内側から鍵を回した。
カチリ。
音が部屋に響く。
息が止まった。
「……どうやって。」
かすれた声が漏れる。
バンドマンはポケットからスタッフ用の合鍵を取り出して見せた。
バ「人脈ってやつ。便利でしょ?」
ぞっとした。
背中が壁に吸い寄せられるように後ずさる。
「なに……するつもり。」
喉が乾いて声が震える。