第2章 譲れない想い
女の心臓は早鐘を打ち、頬はさらに熱を帯びていく。
酔いのせいだけではなく、告白を受けた現実が体を揺らしていた。
その隣で、キタニの沈黙は続いていた。
笑い飛ばすこともできず、茶化すこともできない。
曖昧な返事をした自分に、ほんの少しだけ後悔が滲む。
やがて、女は俯きながら小さく笑った。
「……なんか、今日はすごい日だね。」
場を和ませようとする言葉だったが、胸の奥では確かに何かが変わり始めていた。
女はしばらく口を開けずにいた。
なとりからの真剣な告白が、胸の奥に熱を残して離れない。
けれど自分の気持ちがどうなのか、その場で言葉にするには早すぎる。
息を呑むだけで、視線を泳がせる。
「……えっと、その……。」
言葉が続かない。
沈黙を破ったのは、隣に座っていたキタニだった。
彼はわざとらしく肩をすくめ、氷の溶けたグラスをテーブルに置きながら小さく笑った。
タ「……なんだよ、真剣な空気になってんじゃん。だったら俺も言っとくか。」
女と、なとりが同時に彼を見る。
タ「俺もさ、ずっと前からお前のこと好きだったよ。」
軽く吐き出すように、けれど冗談めいた響きで。
女は目を瞬かせた。
「……ちょ、何それ。今そんなこと言う?」
タ「はは、冗談だよ。……いや、半分は本気かもな。」
どこか煙に巻くような調子。
けれどその瞳の奥は笑っていなかった。
なとりは、唇を噛みしめた。