第2章 譲れない想い
な「ねぇ…。」
思わず声が漏れる。
キタニと女が同時に視線を向ける。
な「かやさんと、キタニさんって……付き合ってるんですか?」
静かな問いかけ。
だが、胸の奥からせり上がった嫉妬が言葉を熱くさせていた。
女は目を丸くし、すぐに吹き出した。
「え、なにそれ。付き合ってるように見える?」
な「……正直、見えました。」
なとりの答えは真っ直ぐだった。
女はくすくす笑いながら、キタニの方へ顔を向ける。
「だってさ。ねぇ、どう思う?」
同意を求めるような視線。
キタニはグラスを揺らし、氷の音を鳴らしながらゆっくりと息を吐いた。
タ「……さぁな。」
それは肯定でも否定でもない。
曖昧に濁された答えは、逆に部屋の空気を重くする。
女は
「なんだそれー。」
と笑って受け流した。
けれど、なとりの胸は強く締め付けられていた。
沈黙に耐えられず、なとりは視線を女に戻し深く息を吸う。
な「……俺、かやさんのことが好きです。」
その告白は思ったよりも静かで、それでいて確かな熱を帯びていた。
言葉を吐いた瞬間、胸の奥のざわめきが少しだけ晴れる。
女は一瞬驚いたように目を見開き次の瞬間には頬の赤さが酔いからなのか、別の理由からなのか判別できなくなっていた。
「……え?」
な「初めて会ったときから、ずっと頭から離れなくて。今日、こうして一緒に過ごして……やっぱり好きだって確信しました。」
リビングに流れる時間がゆっくりと引き延ばされる。
缶が机に置かれる音さえ響くほど、部屋は静まり返った。
キタニはグラスを口に運び、何も言わずに飲み干した。
ただ、その目は曖昧さを捨てきれないまま2人を交互に見つめていた。
女はしばらく言葉を探すように視線を彷徨わせ、口を開く。
「……冗談とかじゃなくて?」
な「本気です。」
なとりの瞳は真っ直ぐだった。