第3章 看病の日々の中
「なんで何も喋ってくれないんだろう…。」
他のことはだいたい出来るようになったのだが、全然喋ってくれないし、基本は動かない。
もしかして喋れないとかある?
お風呂から上がって髪を乾かしていない悟くんの髪にドライヤーをかける。
自身の髪も乾かして悟くんの目の前に座った。
「悟くん、喋れる?」
「……ぁ…奏音…。」
喋った!!
声は掠れているが、確かに私の名前を呼んだ。
嬉しさのあまり顔を近付けると唇が重なって慌てて離れる。
今、悟くんから…。
「奏音……奏音…。」
え、なんでそんな呼ぶの?まだ私の名前しか言えないのかな…。
何かして欲しいことがあるのかと思い顔を見ると、へらっと笑った。
心臓止まるかと思った。無表情だった整った顔がいきなり笑うとこんなにドキドキするなんて…。
「奏音…。」
手を伸ばしてくるのでまた近付くと頬に手を添えられ、そのまま唇が重なる。
また、キスした……なんでするのだろう。
少し考えて、変な方向にいきついた。
欲求不満……そんなことはないと、熱くなった顔を冷ますように首を振った。
悟くんの唇の感触が消えない…。