第9章 離れることは許されない
伊地知さんに報告しようとスマホを取ると、その伊地知さんから電話がかかってきたので慌てて出る。
「御子神さん、どうしましょう…。」
「え、どうしたんですか?私も報告が…。」
伊地知さんの話を聞くと、悟くんの遺産が入ってこないと悟くんのご両親が高専まで来たそうだ。
婚約者までどうして最後に会わせてくれなかったのだと一緒に…。
ご両親は仕方ないとして…婚約者までは私にとって非常にまずい。
私は浮気相手という立場になってしまう。
とりあえず私も悟くんが目を覚ましたことを伝えたが、どうやらご両親や婚約者がここに来て遺品を持っていくと言っているのだと言う。
どうしよう…悟くんはこの状態なので逃げようにも逃げられない。
なんで今になって…もう少し早ければ悟くんがどうにかしてくれたのに…。
悟くん任せでいるのもダメだと思い、伊地知さんに連れてきてもらうよう伝えた。
「悟くんごめん、ご両親と婚約者さんが来る…。」
「…ぇ……ぁ…。」
勝手にごめんね…私がなんとかする。
ご両親はお金のことばかりだな…遺品が欲しいだけかもだけど。
婚約者はどうなんだろ…悟くんのこと好きなら大変そう。
私が何も考えずに還魂の術を使ったせいで…。
とりあえず家中を見て回って変なものがないか確認し、悟くんにご飯を食べさせていないことを思い出して焦る。
「悟くんごめん!お腹空いたよね!?なるべく早く終わらせるから、ちょっと…ちょっとだけ待って欲しい!」
お願いするがお腹で返事をされて、待っててと作ることにした。
急いでお粥を作り寝室に運ぼうとするとインターホンが鳴る。
くぅ…間に合わなかった。
上がってくる間に食べさせられるだろうか…伊地知さんに勝手に入ってきてもらおう。
寝室にお粥を運び起き上がらせて、冷ましながら食べさせる。
「悟くんごめん、もう来ちゃってるの。会える?」
悟くんはただ私の名前呼び口を開ける。
どうでもいいから食べさせろということだろうか。