第8章 2人が交わる時
それからあまり時間が経たないうちにインターホンが鳴り、伊地知さんと硝子ちゃんを招き入れる。
もう1人は後から来るとのことだった。
任務に出ているらしい。現在唯一の特級呪術師で忙しいようだ。
「五条が何故生きているかは伊地知から少し聞いた。けど、これは私にはどうしようも出来ない。今、五条には何も触れられない。」
本当は自動で危険物とそうでない物を判断し、危険物は悟くんに触れられないようになっているのだが、今はそれが機能していないらしく、誰も何も触れられないようだ。
手に持っていたスマホで実家にかける。
母が出てこんな時間にと怒られたが、祖母を起こしてもらい代わってもらった。
母は還魂の術のことを知らない。
「おばあちゃん!悟くんが術式を使えるようになったんだけど、暴走してて何も出来なくて…このままだと脳が焼き切れて死んじゃう…どうしたらいいの?」
祖母に聞いてもどうしようもならないことなのに、それでも何か知っていないかと縋る。
「そう慌てんでも…還魂の術を使った時、脳を弄られて廃人だったんだろ?だが修復して今は元に戻った。還魂の術で生き返ったもんはそう簡単に死なん。術に守られとるんだから。」
祖母が言うにはあの時、徐々に還魂の術のお陰で脳が修復されていたようなのだ。
命にかかわるような怪我等はゆっくりと治癒していくと言う。
老衰や首を切断されたりとすぐ死に至るようなものはどうにも出来ないらしいが。
だから今回もゆっくりだが、焼かれた脳が修復されている、ということらしい。
「よかった…悟くん死なない…?」
「死なん、安心せい。だが、目が覚めても完全に治るまでには時間がかかるだろう。」
なんであの時教えてくれなかったの…。
ありがとうと言い電話を切って、悟くんに手を翳す。
こうしていればいつか触れないだろうか。
無理か…私の手はこの無限を突破出来ない。
ゆっくりってどのくらいゆっくりなのだろう、修復は間に合っているの?