第8章 2人が交わる時
その後はいつも通り過ごして、とうとう悟くんの誕生日になってしまった。
午前のうちに夜ご飯の食材やケーキの材料を買ってきて、お昼ご飯を食べる。
「……どうしよう…この僕がセックスに緊張してる…。」
ご飯を吹き出しそうになった。
いきなりやめて欲しい…。
緊張しているのは行為に対してじゃなくて力のことだろう、もし術式が発動してそのまま暴走してしまえば、反転術式が使えなければ……。
あぁ、考えるのやめよう。
「だって、やっと奏音と出来るんだよ?直前になってやっぱ無理とか、僕も無理だからね?優しく抱けるかな、とか…痛くしないようにしなきゃな、とかずっと考えてる。」
え、わかってるよね?術式がその身体に戻るかもしれないこと。
なんかもう、私とすることしか頭になさそうな彼を何故か愛しくなって見つめた。
昼食を終え、少しゆっくりしてからケーキを作り始めると、甘くしてと頭を撫でに来る悟くん。
本当、甘いの好きなんだから…甘いのばっか食べてたから悟くんもそんな甘いの?
なんて変なことを考えながらスポンジ生地を作る。
「ねぇねぇ、僕が手伝ったら邪魔になる?」
「え、なんで?たぶん悟くんの方が上手く作れると思うけど…あ、でも、私が作りたいからゆっくりしてて?」
悟くんはなんでも出来るから、料理もお菓子作りも何もかも私より上手に出来るだろう。
それでも、今日は悟くんの誕生日だから私が全部やりたいのだ。
どうしてもと言われたらお願いするつもりだけど。
スポンジ生地に生クリームを塗って飾り付けをしていく。
残った生クリームは悟くんの胃の中に入った。
ケーキが完成して冷蔵庫に入れ、夕飯の準備を始める。
「わぁ!すごい美味しそう!食べてもいい!?」
全て作り終わりテーブルに運ぶと目を輝かせながら言うので、いいよと言って2人で手を合わせる。
「そういえば、奏音お酒飲まないの?」
「え、なんで?私が飲んでどうするの。それに今日はその…飲まないよっ!」
くくくっとほぼ堪えていないような笑い方で笑顔を見せる悟くんにすでに酔っています。なーんて。
今日は悟くんが主役だし、後でアレするんだし、飲めるわけない。