第8章 2人が交わる時
伊地知さんに悟くんの力を取り戻す方法を聞いてから幾らか経ち、あと1ヶ月程で悟くんと再開してから1年が経とうとしていた。
「奏音、ちょっと話があるんだけど。」
どうしたのだろう…誕生日プレゼントで欲しいものがあるのかな。
「プレゼント?何が欲しいの?」
と言っても悟くんのお金で材料を買って何かを作ることしか出来ないが…。
だから仕事したいのに…。
「え?あーまあ……そうだね、戻りたいんだよね、高専に。」
え、なに、言ってるの…?
やだよ…戻るということは、力を取り戻さなきゃいけない…でももしそれをしたら……。
「だからさ、術式使えるようになんないかな。調べてるんでしょ?僕も調べてみたけど、今の僕じゃ全然…知ってることない?」
「…どうして、戻りたいの?」
「この先、奏音を守り切れるかわかんないじゃん。だから、力が欲しいんだよね。」
大丈夫だよと言っても彼の意志は固いようで、それなら話すしかないと心を決めた。
どうか、この話を聞いて諦めてくれないかと願いを込めて。
性行為をしなきゃいけないこと、まだその方法が正しいか断定出来ないこと、もし戻った時どうなるかわからないことを話した。
「なるほどねぇ……じゃあさ、誕生日プレゼントは奏音をちょーだい?」
する気なんだ…死ぬかもしれないと知りながら、力を取り戻したいんだ。
だったら……。
「わかった、いいよ!」
悟くんはありがとうと優しく微笑んだ。
例え私が彼を生き返らせたとしても、悟くんの人生は悟くんのもので、私がどうこう出来るわけじゃない。