第6章 引越し
「みんなのこと覚えてる?僕の同級生とか後輩とか…。」
「覚えてるよ?」
よく遊んでいたのは傑くんだけだけど、ななみんや雄くんのことも覚えている。
伊地知さんは見かける度に優しく声をかけてくれていた。
「灰原はさ、奏音に会わなくなった後すぐ死んだよ。七海も去年の渋谷で死んだ。」
嘘…あの2人が…どうして今そんな話を……。
私を倒した悟くんは上に乗って胸に顔を押し付けながら抱き締めてくる。
抑えていたものがお酒で溢れてきているんだろう。
「学長…夜蛾も渋谷の後に死んだんだ。」
ぎゅっと頭を抱き締めて、白髪に鼻を埋めた。
「でもね、僕は渋谷で封印されちゃって…生徒たちが助けてくれたんだけど……僕を封印したのは傑の身体を乗っ取ったやつ。」
これと同じ術式と額の縫い目を指差す。
傑くんの身体…だから傑くんはいなくなったの?
ただ黙って聞いていると頬を濡らしながら唇を重ねてくる。
「傑は…僕がここに来た1年前に死んだよ………僕が殺した。」
そうやって悲しい言葉を吐きながら何度も口付けを交わす。
悟くんの涙はあの日以来見ていない。
私にありがとうと言いながら静かに涙を流したあの日。
小さい頃も一度も見たことはなかった。
ずっと辛かったんだね…苦しかったんだね…孤独の中にいた彼を癒したい。
神様…悟くんがまたあの世界に戻るまでの間、少しの暇を与えてください。
心も身体もきっと疲れきっているはずだから。
「傑は…罪を犯した。だから僕が終わらせた…親友の僕がやらなきゃいけなかった。あいつとはいつまでも親友のままなんだ。」
悟くんが本気で呪術師に戻りたいと言うまで、私があなたの居場所になる。
「悟くん、今はもう少し休んでいよう…?」
そんな簡単に癒えるはずがない、あれから結構経ったけど、まだまだ癒えるはずがないのだ。
それだけの辛い思いをしてきたのだから。
でもきっと…癒えることはないのだろう、いつも明るく全てを隠してきた彼の心は限界なのだ。