第6章 引越し
さすがに悟くんは座らせて目の前に立ち、目立たないようにする。
この身長のせいで目立ってるのもあると思うからと座らせたが…正直、意味がなかった気がする。
足長すぎるんだけど!
ちょくちょく膝を揺らして私の足に擦ってくる。
ガタンッと揺れてバランスを崩し咄嗟に背もたれに手をついたが、思ったよりも悟くんの頭の位置が高くてぶつかってしまった。
「っ!うっ、〜〜〜っ!!」
「ははっ、大丈夫?いたたた…。」
顎が…削れたかも…。
今日はキャップじゃないからよかったけど、さすがに痛い。
顎を抑えながらごめんと悟くんを見ると、自身の頭を撫でていた。
わぁもう…絶対目立ってるよ……怖くて周りを見れない。
周りを見れないまま電車を降りて引かれるままについていく。
どこに行くんだろう…。
「あ、これ持ってて。ポケットだと落とすかも。ついでに見てみて。」
ポケットから出された通帳を受け取り見てみると、先程記帳されたのだろう、埋まっている欄が増えている。
って、これ…家賃?光熱費とかも引かれている。
「たぶんお手伝いさんも来てくれてるんだよね。面倒臭くて、一気に払っちゃったから。」
適当過ぎないか?
「それでね、家賃とかも払われてるわけだし、このままここに引越さない?君がずっと一緒にいるってんなら、買おうかなとも思ってる。」
買うって…この家賃って1ヶ月の金額だよね?私が住んでるアパートと桁が違うんだが。
確かに悟くんの貯金額でいったら、余裕で買えるのかもしれない。
って、問題はそこじゃない。
「家、知ってる人いるんじゃないの?住んでるのバレたら怪しまれるんじゃ…?」
「まあ大丈夫でしょ、僕の家知ってる人ほとんどいないし。まず僕がほぼ家に帰ってなかったしね。」
いやいや、家族とか高専関係者はさすがに知ってるんじゃないだろうか。
大丈夫だからと手を引かれて、首が痛くなりそうな程見上げる建物の中に入っていった。
嘘でしょ…さすがにこんなとこ住めない。
こんな庶民の私がこんなとこは…。