第2章 最強の死
わかりましたと答え、悟くんの胸に手をあてて、右手は人差し指と中指を立てて顔の前に翳す。
一生に一度の私の能力。
代々その力があると言われていたが、誰も使ったことがない能力。
使った後に何があるかわからない、私は命を落とすのか…はたまた、何も変わらないのか。
11年間一度も会うことがなかったこの男に私は躊躇いもせず使う。
「五条悟の魂よ、理を捨て此の身に還り給え。」
本当に悟くんは蘇るのだろうか。私の身体にはなんの変化もない。
「伊地知さん、脈を診てもらえますか。」
わけがわからない伊地知さんは言われるがままに脈を診た。
「っ!どういうことですか…?生き返った…?」
「私の力です。もう使えないんですけどね。」
このことは誰にも伝えず死んだことにしていて欲しいと伝え、悟くんの服を捲った。
やはり…ここを切断されたのだろう。
腹部を縫い合わせている糸は背中まで回っているようだ。
額にも縫い目がある。
眉間に力を入れ、その縫い目を睨んだ。
「この身体を…悟くんの身体を弄りましたか?」
私は呪術師でも医者でもない、ただの派遣社員だ。
だが、この能力のせいで呪術や医術に関しては多少知識がある。
「両面宿儺を知っていますか?呪術師はその者を倒す為に沢山の仲間を失いました。」
呪いの王…そうか、悟くんはそいつと戦って…。
乙骨憂太という彼の生徒がこの身体を乗っ取り戦ったそうだ。