第5章 縮む距離
祖母に話を聞いてから幾らか経ち、そろそろ梅雨入りしそうな時期になっていた。
何度も悟くんに襲われかけ拒めば、その度に悟くんは手を引っ込めた。
買い物に1人で出たりして、家に悟くんを1人にしたりしたのだが、どうやらしていない。
「奏音、そろそろ正直になって。」
夜、布団の中にいると布団を剥ぎ取られ、顔の横に手をついて見つめられる。
床ドンというやつでは…。
悟くんは悟くんで、ほとんど普通に喋れるようになってるし、こうやって私の気持ちを確かめるように迫られることもしばしば…。
早くと口付けられて、顔に熱が集まっていくのがわかる。
この口付けもずっと触れるだけのもので、それ以上はしてこない。
「僕のモノ触るのも嫌?」
嫌というわけではないのだけれども…どうしても引っかかってしまうのだ。
悟くんの気持ちは本物じゃないと…。
これから一生愛されることになるのに。
顔を背けて目をぎゅっと瞑ると、ごめんと謝り自身の布団に戻っていく。
ごめん、悟くんごめんなさい…。
「いつになったら許してくれるの。」
身体を、ってこと?
「僕の彼女でしょ。」
「か、彼女になったつもりはないかな…。」
お互いまだ好きなんて言ってない。
「ダメ。奏音は僕の彼女だよ。」
どうやらもう確定していることらしい。
というか悟くん、婚約者はどうするんだ…。
もし力を取り戻したら呪術師に戻るんだろう?
そうなれば、五条悟が生きていることも明るみになる。
その時、私は邪魔な存在だ。
「あ、そうだ悟くん、私そろそろ仕事始めようかなっておもっ……。」
「ダメ、無理。お金ならある。」
私まだ最後まで言ってない。
機嫌が悪過ぎる、私が拒んだからってわかってはいるんだけど…。
機嫌が良い時にまた話してみよう。
おやすみと言って目を瞑った。