第4章 力の代価
とりあえず悟くんのことは無視して、伊地知さんが来たらお願いしようと思っていたことを話してみる。
「伊地知さん、私の能力について祖母に聞きに行こうと思うのですが、送って頂けることって出来ませんかね?」
この男を電車に乗せるのが怖すぎる。
逃げ場のないところで五条悟だとバレては大変だ。
かと言って置いて行こうとしても、無理やりついてくるだろう。
伊地知さんはいいですよと即答してくださった。
お礼を言って悟くんを見る。
「そうだ悟くん、この前買ってきた服着ようか!」
まあ作ってもらったのだが…さすがに悟くんサイズの服は普通に売ってなかった。
「そういえば…五条さんの服、次来た時にでも持ってきましょうか?」
どうやら悟くんが着ていた服が残っているらしく、食い気味でお願いしますと頭を下げた。
今までサイズの合わない服を着てもらっていたから申し訳なかったけど、これから出掛けることも増えるだろうし、ちゃんとした物を着てもらいたい。
「じゃあ今日はこれ着てこ!」
服を出してきて差し出すとバンザイをしたので、はいはいと言いながら脱がしていく。
今年で三十路だろ…と心の中で悪態をつくが、悪い気はしなかった。
着替えを終えキャップを被らせて車に乗る。
「かっこ、いい?」
グッと親指を立てて見せた。
だが気に食わなかったらしい。またかっこいい?と聞いてくる。
「かっこいいよ!」
うん、満足したらしい。
伊地知さんにお願いしますと言うと、車が走り出す。
悟くんがくっついてきて髪の匂いを嗅んでくるので全力で押し返してるのだが、力が強すぎて意味がなかった。
シートベルト伸びきってますけど…。
もう諦めて無になる。
無になっている間についたようだ。
もしかしたら、祖母は五条悟のことを知ってるかもしれない。