第4章 力の代価
次の日になると悟くんはいっぱい喋った。
「奏音、美味しい…。」
まだたどたどしい喋り方だが、いろんな言葉を声にしてくれる。
けど…私が美味しいってなに?
今はご飯も食べていないし、お菓子を食べてるわけでもない。
もちろん、何かを飲んだりもしていない。
したことと言えば…キスをされたくらい。
「もっと…。」
もっと!?
え、いや、え…と言葉を詰まらせていると押し倒されて、目の前に悟くんの顔が来たので、ぎゅっと目を瞑った。
ちゅっちゅと何度も唇が重なり、満足したのか私の上から退く。
このキス魔め…と思いながら起き上がって口元を覆った。
「まっか、かわい。」
伊地知さん助けてぇえええ…このイケメンにキュン死させられるぅと思っていると、インターホンが鳴り慌てて出る。
私の願いが届いたのか、伊地知さんが立っていた。
招き入れて悟くんに会わせると、ペコッと会釈をしている。
飲み物を出してきて私も座ろうとすると悟くんに手を引かれて、膝の上に座ってしまった。
「あ、危ないから……。」
腕の中に閉じ込められて、頭の上に顎が乗る。
「かわい。奏音、かわいい。」
首筋にキスをしてこようとするので慌てて止めて、顔面を鷲掴みしてしまった。
「えっと…随分仲が良くなったのですね…。」
「こっ、ここここれはっ…!!」
「うん、彼女。」
今なんて?
いや、なんかの聞き間違い……。
「僕の、彼女。」
ではなかった。
彼女になったつもりはないのだが…。
そういうのって、「好きだよ、付き合お」「はい」で決まるんじゃないの?
私、言われたこともなければ、言ったこともないのだけども。
「私、彼女になったつもりは…。」
「結婚する。」
驚いて悟くんの顔を見れば、満面の笑みではございませんか。
あれ、そういえば悟くんって婚約者いたよね?もう結婚してるのかな…。
指輪はしてなかったけど…戦うから外したとかではないのかな。