第3章 看病の日々の中
「ねぇ悟くん、散歩でもする?」
ご飯の後片付けを終わらせ、私のスマホでゲームをする悟くんに声をかける。
そうだ、悟くんのスマホも買わないとな…たぶんもう前のは使えないだろう。
私の名義で番号も別のにしないと。
反応がないので少し待っていると、スマホを置いた彼がこちらを向いて頷いた。
「よし、じゃあこれ被ってこ!」
さすがに額の縫い目を晒しながらだとみんなに見られるかもしれない。
キャップを被せてお腹を撫でる。
「ここは痛くない?」
頷いて笑うので行こと手を差し出すと、その手を掴んで立ち上がり、離してはもらえなかった。
外に出ると指を絡めて握られ、これは絶対道行く人たちに勘違いされるなと思いながら、好きなようにさせた。
というか、離そうとしても離してくれないだろう。
公園まで来てベンチに座りながら疲れてない?と声をかけて顔を覗く。
そしてキャップを少し上げたかと思うと、一瞬唇が重なる。
だから…学習しろ自分。顔を近付けたらキスされる。
すぐに離れて周りを見たが、どうやら見られてはいないようだ。
「奏音…。」
「ん?わっ!?なに……。」
いきなり立たされて、胸に顔をつけた彼を抱き締めるように腕を動かされた。
慌ててまた周りを見渡すと、呪術高専の制服を着た男の子2人と女の子が1人いた。
恥ずかしいが、そのまま抱き締めて悟くんを隠す。
あまり近場で散歩するのは危ないかもしれない。
彼をよく知る人物ならば、背格好だけで気付くだろう。
変装でもさせればいいのだろうか…。
高専の生徒がいなくなるのを確認して、悟くんを引き剥がす。