第12章 最強の…
あの後悟くんは3日程で帰ってきて、えっちは…された。回復させて〜と言われれば拒むことが出来なかった。
そしてすぐ出掛けて行って、すでに半年…どういうことですか、半年も帰ってこれないって…連絡もさすがに毎日とはいかず、週1程度。寂しい。
「買い物行かなきゃなぁ…。」
ほぼ空の冷蔵庫を見て呟く。さてと…と鞄を持って外に出た。
黄昏時、暗くなっていく空の下、スーパーへと向かう。だが、スーパーに辿り着くことは叶わなかった。
突然、口を押さえられて路地裏に連れていかれた。騒いだら殺すと脅されて何度も頷く。
「五条悟が溺愛している妻とはお前のことか?」
妻?まだ結婚はしていないのだけども…。
婚約ですけども…と左手を見せる。薬指にはまっているのはどう見ても婚約指輪だ。
「まあいい、使い物ならなければ殺すだけだ。」
心臓がバクバクと音をたてる。何故いきなりこんなことが…悟くん、助けて…。
私の目の前にある男の手は独特な形をしている。呪詛師だろうか。
そのままどこかに連れていかれ、廃墟のような場所で縛られ、抵抗をすれば殴られた。
痛い、怖い…私、このまま殺されるの?なんの力もない自分があまりにもちっぽけに思えた。
男は私の鞄を漁りスマホを取り出すと、ロックを解けと目の前に差し出す。
縛られているから無理なのだが…そう思っていると手をギリギリと掴まれスマホの画面に指を押し付けられる。
男はスマホを操作し、呼び出し音が聞こえてきた。
そしてすぐに着信音は途切れて、明るい声が聞こえてくる。
「奏音?どうしたの、寂しくなっちゃった?帰ったらいっぱい愛してあげるから、もうちょっと待ってて。」
語尾にハートがつきそうな程の甘い声。
「五条悟か。」
「…誰だよ、お前。僕の奏音はどこ?」
一気に低くなりドスの効いた声になる。
「指定場所に来なければ殺す。」
悟くんに何をするつもりなのだろう、よくないことだけはわかる。
男は悟くんに、恐らくここの住所を伝えて一方的に電話を切った。