第11章 生きるために剣を振れ 【冨岡編 第1話】
「…炭治郎さん…ありがとうございます。」
私は素直に礼を言った。炭治郎は優しく微笑んで、「気にしないでくれ」と言ってくれた。
その時、善逸が私の顔を覗き込み、何かを察したように言った。
「知令ちゃん、嘘ついてる。本当に大丈夫じゃないんだろ。顔色がまだ悪いし、みたらし団子を食べた時も、少し震えてた。」
善逸の鋭い言葉に、私はドキリとした。良くなってはいるが、確かにまだ鈍痛がする。この人は臆病なようでいて、こういう時だけは本当に鋭い。ごまかせない。
「…ごめんなさい。でも、本当に大丈夫なんです。」
「俺は、知令が無理してるの、なんか分かるんだよ…。だって、俺もいつも無理してるから…」
善逸はそう言って、再び大声で泣き始めた。
「泣くな、善逸!知令は、頑張ってるんだ!」
炭治郎が善逸の頭を撫でながら、私に視線を戻した。
「知令、もし辛いなら、無理に強がらなくてもいいんだ。俺たちは知令の味方だから。辛い時は、俺たちを頼ってくれ。」
炭治郎の言葉が、私の心にじんわりと染み渡った。私は、今まで誰にも見せなかった弱い自分を、彼らの前でさらけ出してもいいのだと、そう思えた。
「俺は、お前に負けて腹が立つ!だから、お前が元気になったら俺と稽古してくれ!もちろん、手加減なしでな!」
伊之助が、いつになく真剣な表情で言った。その言葉には、伊之助なりの優しさが込められているような気がした。
「はい!負けませんよ、伊之助さん!」
そう言って、私は初めて心から笑うことができた。
3人は、それぞれの形で私を心配し、そして励ましてくれた。彼らの存在が、私の心を少しずつ溶かしていく。
みたらし団子は、いつの間にか、温かくて甘い、希望の味がした。私は、この温かくて優しい気持ちを、ずっと大切にしていきたいと思った。
「よし!みんな、今日は帰るぞ!」
炭治郎が言うと、善逸はまだ泣き止まずに、「もうちょっとだけ…!」と駄々をこね、伊之助は「俺はまだ稽古したい!」と暴れていた。
相変わらず賑やかな3人の姿に、私はまた笑ってしまった。
賑やかになった襖の向こうから、彼らの声が遠ざかっていく。
「大丈夫だ、知令!また来るからな!」
その声が、私の心に響いた。
…ありがとう3人。