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【鬼滅の刃】屋烏の愛

第11章 生きるために剣を振れ 【冨岡編 第1話】


夜が深くなり、蝶屋敷の廊下には静寂が漂っていた。

蝋燭の炎が揺れるたび、壁に影が踊る。知令は小さなベッドに腰掛け、日輪刀を膝の上に置いたまま、手元の布を握りしめていた。心はまだ、あの日の光景の痛みに押し潰されそうだった。

そのとき、扉が静かに開き、義勇が入ってきた。深夜にもかかわらず、彼の存在は不思議と落ち着きを与える。無表情のまま、知令の前に立つ義勇は、ゆっくりと視線を下ろす。

「眠れないか。」

声は低く、冷たさを帯びているが、その一言に不思議な安心感が含まれていた。知令は小さく頷き、声にならない返事を返す。

義勇は静かにベッドの端に腰を下ろすことなく、立ったまま少しだけ距離を詰める。その沈黙の間、知令は彼の呼吸や微かな動作に目を凝らす。無表情の奥に、確かにこちらを気にかける心があることを感じ取った。

「……あなたは、私を……」

知令は言葉を途切れさせ、ためらう。義勇が返答することはなく、ただ静かに見つめるだけだった。だが、その視線は冷たさの裏に優しさを宿しており、彼女は思わず胸が熱くなる。

「……ありがとうございます。少し、心が落ち着きました。」

小さく呟くと、義勇はゆっくりと頷き、短く一言だけ告げる。

「無理するな。」

その声は前よりも柔らかさを帯び、知令の胸にじんわりと染み渡る。義勇は再び何も言わずに立ち去るが、残された静けさの中で彼女は、初めて自分の心が誰かに守られていることを実感する。

知令は刀を握り直し、窓の外の月明かりに目を向ける。夜風がカーテンを揺らし、庭の影が静かに伸びていく。その瞬間、胸の奥に小さな希望の光が灯った。

「……生きるために、戦うために…私は、強くなる……」

深い夜の静寂の中で、知令の心は少しずつ立ち直りを見せていた。そして同時に、無口で冷静な義勇への尊敬と、知らず知らずのうちに芽生え始めた淡い想いが、胸の奥で静かに揺れていた。
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