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【鬼滅の刃】屋烏の愛

第11章 生きるために剣を振れ 【冨岡編 第1話】


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日が傾き、部屋は夕暮れの柔らかなオレンジに染まり始めた。

知令は窓際の椅子に座ったまま、ひたすら手元の布を揉みながら考え込んでいた。

"復讐だけに囚われるな。生きるために剣を振れ。"

知令の脳内で何度も反響する。

義勇は再び静かに部屋の扉を開け、音もなく入ってきた。今回は少し距離を詰め、椅子に腰掛ける知令の横に立つ。視線は相変わらず冷たく澄んでいるが、以前とは微妙に違うのは、その眼差しがただ観察するだけでなく、こちらを見守っていることが感じられる点だった。

「まだ、気持ちが落ち着かないか。」

義勇の声は低く、しかし前回よりも少し柔らかさが混じる。知令は思わず息を呑む。普段なら絶対に聞くことのない感情の残響が、短い一言に隠れているのを、彼女は敏感に感じ取った。

「……はい……」

小さく答えると、視線は膝の上の布から、床の影へと落ちる。言葉にするのも難しい感情が胸に渦巻いていた。怒り、悲しみ、そして僅かな希望…すべてが整理されずに混ざり合っていた。

義勇はしばらく黙って彼女の傍らに立っていたが、やがてゆっくりと口を開いた。

「刀を手にしても、感情に流されるな。お前の心は、戦う力よりも大切だ。」

知令の胸がぎゅっと締め付けられる。冷たい声音の奥に、確かな思いやりを感じる。義勇は言葉少なに、しかし的確に彼女の心に触れていた。知令は目の前で静かに息を整え、少しずつ心が落ち着いていくのを感じた。

「……ありがとうございます……」

言葉は震え、まだ完全には整理されていないが、初めて義勇に心の一部を認めてもらえたような気がした。

義勇はそれ以上の言葉を発さず、ただ静かに立ち去る。だが、その存在は部屋に残り、知令の心に温かい余韻を残した。視線を窓の外に戻すと、夕日が木々を染め、庭の影を長く伸ばしている。風がそっと吹き、葉のざわめきが静かに耳に届く。

知令は深く息を吸い込み、刀を握る手に力を込める。義勇の存在が、戦うための光のように、静かに、しかし確かに心を照らしている。

「……私、もう少しだけ、強くなれる気がする。」

小さな呟きに、夕日の光が淡く応える。静かで穏やかな時間の中で、知令の心は少しずつ立ち直りを見せ始めていた。
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