第10章 父との約束、母の温もり
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「いつものよりは強いな!だが、まだまだだ。」
俺――炎柱・煉獄杏寿郎は、屋敷に駆け付け、隊士達が倒し損ねている鬼の始末をしていた。俺と共に、宇髄と不死川も続いている。鎹鴉から「下弦の鬼に匹敵する鬼が出現し、隊士たちが壊滅的な被害を受けている」と聞かされ、急ぎ駆けつけたのだ。
広間の奥から音が聞こえた。
親玉であろう鬼の咆哮と、金属が打ち合う音。
必死で闘っているのは明確だったが、相手は下弦に近い鬼だ。そのうち喰われてしまうだろう。
「助太刀しなければな!」
「あぁ、ド派手に行くぜ!」
「…チッ、ぜってぇ殺す。」
俺たちが広間に飛び込んだ瞬間、信じられない光景が目に飛び込んできた。
そこにいたのは、愛染少女だった。
たった一人で、下弦の鬼に匹敵する強さを持つ鬼と対峙している。
彼女の様子は、常軌を逸していた。呼吸は荒く、涙がとめどなく流れ、顔は血と泥にまみれ、まるで別人のようにやつれている。その瞳は虚ろで、焦点が定まらず、憎悪と狂気だけが宿っているように見えた。
「ハハハ!見ろよ、この女。親を殺されて、頭がイカれちまったようだぜ!」
鬼の嘲笑と共に、容赦ない攻撃が愛染に襲いかかる。