第10章 父との約束、母の温もり
その日の朝、久しぶりに実家へ帰省しようと、私は手紙を書いていた。
最近は任務続きで、両親に顔を見せることができていなかった。父の厳しいながらも温かい眼差し、母の優しい手料理、そして、二人との何気ないおしゃべり。そんな平凡な日常が、私にとってどれほど大切なものだったか、鬼殺隊になってから常々感じる。
「ええと…"今度、帰省します。二人の顔を見に行くので、楽しみにしていてください。"…へへへ。」
「何書いてるんですかー?」
「あっ、なほちゃん達。」
蝶屋敷にて、怪我した身体を休ませながら、両親に手紙を書いていた。
そこへひょっこりと、なほちゃん、すみちゃん、きよちゃんの3人が現れる。
「親に手紙書いてたの。心配してると思うから…。」
「偉いですー!」
「お父さんもお母さんもきっと喜びます!」
「…そうだよね。喜びますよね。」
鬼殺隊になると決めた時、両親は猛反対していた。
才能も何も無いお前が出来るわけないと。
鬼殺隊に貢献したいなら金銭的支援でいいじゃないか。
無知な私を守りたいと思ったからこそ、反対をしたんだろう。
気持ちは分かっているけど、私の気持ちは揺るがなくて、鬼殺隊の隊員となった。
まだ階級は癸ではあるけど、それでも人々を守るために頑張っていると思う。
今の姿は両親にどう写っているのだろうか?
それを含め、今度合う時にでも聞いてみよう。
綴った手紙を鎹鴉に託し、私は任務へと向かった。
まさか、その日の夜に、実家に鬼が出現したとの知らせを受けることになるなどとは、夢にも思っていなかった。