第9章 透き通るは昔の記憶
彼は、私のことを、じっと見つめている。その瞳には、以前のような無関心な光はなく、どこか懐かしさを感じるような、不思議な光が宿っているように感じた。
「…君…どこかで…」
「任務で1度お会いしてます!」
「…違う…もっと昔に」
彼の言葉は、途切れた。
時透さんは鬼の斬撃を避け、鬼の首を瞬きしている間に刎ねていた。
やっぱり柱って…凄い…。
感心していると、地面から鈍い音が鳴った。
一人の鬼殺隊の隊士が、鬼の攻撃によって、意識を失っていたのだ。
「…ふぇぇ…大丈夫ですか?!」
私が駆け寄ろうとしたその時、一つの巨大な影が、私の目の前に現れた。
「…南無阿弥陀仏…」
「柱の…!」
そこにいたのは、岩柱・悲鳴嶼行冥さんだった。彼は、鬼の攻撃を、鎖鉄球で受け止め、鬼を粉砕していく。彼の圧倒的な力に、私は、ただただ感嘆するしかなかった。
「…私だって、頑張らないと…!」
私は、二人の柱の圧倒的な力に触れ、改めて自分の未熟さを痛感した。同時に、二人のように、鬼を倒し、人々を守れるようになりたいと強く決心できた。
私は、再び日輪刀を握りしめ、鬼に立ち向かう。
「…愛の呼吸…弐ノ型…愛及屋烏…!」
人を傷つけようとする敵に対して、複数の攻撃を同時に繰り出し、相手の行動を封じる。しかし、鬼は、私の攻撃を躱し、私に攻撃を仕掛けてきた。
「くぁ゛…!」
私の肩に、鬼の爪が深々と食い込む。
でも、まだ舞える。
「…愛の呼吸…参ノ型…兼愛無私…!」
相手の攻撃を冷静に見極めて回避し、反撃に転じた。そして、ついに、鬼の首を切り落とした。
「はぁっ…ん…はぁっ。」
その光景を、悲鳴嶼さんは、じっと見つめているようだった。
盲目と言うことは知っているが、彼は何を感じているのだろうか。彼の心にはいったい何が写っているのか、私には分からなかった。しかし、
「…南無阿弥陀仏…見事だ…」
私にはもったいないお褒めの言葉を私にくれた。