第9章 透き通るは昔の記憶
やがて、私たちは、鬼のいる洞窟の前に辿り着いた。
洞窟の中からは、不気味な鬼の気配が漂っている。
「…時透さん、この鬼は、血鬼術で幻覚を見せてくるタイプです。お気をつけください。」
私は、事前に調べた鬼の情報を、時透さんに伝える。
しかし、彼は私の言葉を全く聞いていない。
「…この洞窟、なんだかおまんじゅうみたいだね。」
時透さんの言葉に、私は呆然とした。
「…ふえぇ?!冗談を言っている場合ではありませんよ!」
私の言葉に、時透さんは、ようやく私の方を向いてくれたが、彼の瞳は、遠い空の彼方を見ていた。
「…冗談じゃないよ。本当におまんじゅうみたいだ。」
時透さんは、そう言うと、洞窟の中へと入っていっていく。
私は、彼の言葉に戸惑いながらも、彼の後を追った。
洞窟の中は、暗く、不気味な空気が漂っている。どこから攻撃が来るか分からない。警戒しながら歩みを進めると奥には鬼の姿があった。
「…愛の呼吸!壱ノ型…鴻雁愛力!」
私は、鬼の動きを分析し、最も安全な場所から、相手の急所を的確に攻撃をした。鬼は、私の攻撃に怯み、血鬼術を発動させる。
「…知令、幻覚だ。気をつけろ。」
時透さんの声が、私の耳に届いた。
私は彼の言葉を信じ、幻覚に惑わされそうになるも耐えて鬼の頸を狙った。
「…時透さん、今です!」
私の言葉に、時透さんは、信じられないほど素早く反応しました。
彼の刀が、まるで霞のように舞い、鬼の頸を正確に捉えました。