第8章 蛇の恋色、愛の色
伊黒さんの厳しい視線に晒されながらも、私は蜜璃さんと共に任務を遂行した。鬼は一体。しかし、その鬼は異能の血鬼術を使い、私たちの呼吸を狂わせる厄介な相手だった。
「伊黒さん、この鬼、呼吸を乱されるわ!」
蜜璃さんが叫んだ。確かに、私も呼吸を整えるのが難しい。頭脳で状況を分析しようとするが、血鬼術のせいで思考も鈍ってしまう。
「くっ…無様な…!」
伊黒さんは、苦しみながらも刀を振るう。その動きは鋭く、正確だが、いつものような滑らかさがない。このままでは、二人とも危ない。
「…蜜璃さん、伊黒さん!この鬼は、血鬼術を使う際に、ほんの僅かですが、体を硬直させています!」
私は、冷静を装いながらも、必死に二人に叫んだ。
「血鬼術を発動する瞬間に、頸を狙ってください!」
私の言葉に、伊黒さんが鋭い視線を向けた。
「…貴様、何を言っている」
「私は、鬼の血鬼術を徹底的に分析しています。血鬼術には、必ず、隙があります!この鬼の弱点は、血鬼術発動直後の、一瞬の隙です!」
私の言葉を信じてくださったのは、蜜璃さんだった。
「わかったわ! 伊黒さん、行きます!」
蜜璃さんは、私の合図を待たずに、鬼に向かっていく。
「愛の呼吸…壱ノ型、鴻雁愛力!」
私は、刀を構え、鬼の動きを注視する。
「今です! 伊黒さん!」
私の叫びに、伊黒様は、信じられないほど素早く反応した。
彼の刀が、まるで蛇のようにうねり、血鬼術の発動直後で体が硬直した鬼の頸を正確に捉えた。
「蛇の呼吸、壱ノ型…委蛇斬り」
鬼の頸が、地面に落ちた。