第7章 音の豪奢、頭脳の静寂
宇髄さんは私の姿を上から下まで見渡し、フッと笑みをこぼした。
「ほう、これは派手でいいな。お前さん、その隊服は」
私の隊服は、遠目には西洋のドレスに見えるデザインだ。濃い赤色を基調とした上着には、フリルとレースが繊細にあしらわれ、胸元には華やかなコサージュが飾られている。
まじまじと服を見られてしまい、私は頬を赤らめてしまった。
「い、今服の事を話してる場合ですかッ!?」
彼は、私の反応に満足したように頷き、さらに一歩、私に近づいてきた。その距離は他人との距離よりも遥かに近かった。そして、彼は私の顔をじっと見つめ、人差し指で私の頬に触れた。
「それに、お前さんの顔も、悪くねぇ。派手な化粧をすれば、もっと良くなるだろうな」
彼の指は、想像以上に優しかった。私は心臓が跳ねるのを感じて、
「は、はひ…。」
腑抜けた返事をしてしまった。
「ハッハッハ!お前、男慣れしてねぇなぁ。気遅れするなよ!」
彼は、満足そうに私の頭をガシガシと撫でた。
「ふぇぇ…そ、そんな…」
乱れた髪を整える私を見て、彼は先程とは違い、雰囲気を引き締めた。
「…お前のことは聞いている。お前鋭い観察眼を持ってるんだってな。お館様から聞いている。俺の派手な戦いと、お前の地味な戦略…。正直、俺とは釣り合わねぇ。」
「じ、地味って…地味じゃないもん…。」
「いいか。ただ斬るだけじゃつまらねぇ。どうせ命を懸けるなら、誰の記憶にも残るような、とびっきりの派手な戦いにしてやる。お前さんの頭脳と、俺様の音の呼吸。地味な戦略も組み合わされば、この夜をド派手に飾る最高の芸術になるかもしれねぇ。さぁ、俺様と一緒に、この歓楽街の鬼をド派手に殺ってみねぇか?」
宇髄さんの言葉には、抗いがたい魅力があった。
私は、彼の言葉に真摯に耳を傾け、そして、深く頭を下げた。
「…はい。喜んで、ご一緒させていただきます!」