第4章 分析したい、風の気持ち
不死川さんとの共同任務を終えてから、私の任務は、なぜか彼と一緒になることが増えた。
蝶屋敷に戻る道中も、次の任務へと向かう道中も、いつも彼の隣には私がいた。
「…チッ…なんで俺が、毎度毎度、こんなお嬢様の子守なんかしなきゃならねぇんだ…」
彼は、相変わらず不機嫌そうにそう呟く。しかし、彼の言葉の裏には、以前のような冷たさはなかった。
「ふぇぇ…子守だなんて、そんな…」
私がそう言うと、彼は私の頭をコツン、と叩いた。
いて、と反射的に間抜けな声を上げてしまった。
「てめぇ、すぐ『ふぇぇ』って言うのやめろ。鬼に聞かれたら、腹抱えて笑われんだろ」
彼の言葉は乱暴だったが、その声にはどこか楽しそうな響きが混じっているように聞こえた。
「ごめんなさい…つい、癖で…」
「チッ…ま、いい。それより、この村の鬼だ。お前はまた、鬼の分析するんだろ?」
彼は、私の持つ分析ノートを指さした。彼の言葉には、以前のような嘲笑は含まれていなかった。むしろ、少しだけ、私のやり方を認めてくれているようだった。
「はい!不死川さんの剣技の、風の呼吸の軌道と、鬼の動きのパターンを分析して、連携技を編み出せないかと…」
私がそう言うと、彼は驚いたように私を見た。
「…俺の剣技を…?」
「はい!不死川さんの風の呼吸は、とても速くて、鋭いです。もし、それに私の頭がフル回転すれば、もっと効率的に鬼を倒せるはずです!」
私の言葉に、彼は何も答えなかった。ただ、静かに、私の顔を見ていた。そして、やがて口元に笑みを浮かべ、私の頭を乱暴に撫でた。
「…チッ…お前、本当に変な奴だな。」
彼の言葉は、以前のような冷たさではなく、どこか温かい響きを持っていた。
…ふと思ったけど、銀次郎と不死川さんってどこか似てる…?