第3章 水面に浮かぶ静かな村
冨岡さんと別れてから、私は一人、村の近くにある湖のほとりで、鬼の調査を続けていた。
「…鬼は、本当に湖の水を嫌うのですね…。」
私は、ノートに書き留めた情報をもう一度見直す。鬼の行動範囲は、湖から一定の距離までで、それ以上は近づこうとしない。しかし、なぜなのか、その理由はまだ分からない。
「ケッ!お嬢様、早くしろ!夜が明ける前に、鬼を倒さないと、また村人に被害が出るぞ!」
肩に止まった銀次郎が、私の頭を嘴でつついた。
「わかっています…でも、鬼がなぜ湖を避けるのかが分かれば、きっと…」
「チッ…お前ってやつは、本当にめんどくせぇな!」
その時、湖の反対側から、鬼の気配が強くなるのを感じた。私は、日輪刀を握りしめ、鬼の気配のする方へと走り出した。
そこにいたのは、背が高く、腕が四本もある異形の鬼だった。鬼は、村人たちを襲おうと、両腕を振り上げていた。
「やめなさい!」
私は、叫びながら鬼に斬りかかった。しかし、私の刀は、鬼の硬い皮膚に弾かれてしまう。
「ひひっ…なんだ、このお嬢ちゃんは!そんな弱っちい刀で、俺を倒せると思ったのか!」
鬼は、私を嘲笑うように、もう一本の腕を私に向かって振り下ろした。私は、この攻撃を躱しながら、呼吸を整えた。
「愛の呼吸…参ノ型…兼愛無私…!」
鬼の動きを冷静に分析し、最小限の動きで回避する。そして、鬼の急所を狙って攻撃を繰り出した。しかし、私の刀は、鬼に届く直前で、まるで目に見えない壁に阻まれたかのように止まってしまった。
「ふぇぇ…!?どうして…!」
私の刀は、鬼を斬ることができなかった。この鬼の動きを予測できない。私の「愛の呼吸」が、全く通用しない。
頭の回転を早くさせても解決案が見つからない。
まずいまずいまずいまずい。
このままだと喰われる。
これは私の実力不足に他ならない。
鬼の前足でがっちりと身体を固められたと思ったら、勢いよく地面に叩きつけられる。
「〜っ!!」
視界が一瞬真っ白になったかと思えば電流が走ったような鋭い痛みが襲う。
「最弱だな!へへへっ…わけぇ女を堪能してやるぜ。」
あぁ。やっぱり私には鬼殺隊なんて…。