第3章 水面に浮かぶ静かな村
私は、再び湖のほとりに戻ってきた。湖の周りを注意深く調べていると、湖に流れ込む小川のほとりで、冨岡さんが一人、静かに佇んでいるのを見つけた。
「…冨岡さん!」
私は、思わず彼の名を呼んだ。彼は、私の声に気づくと、驚いたように振り返った。
「…なぜ、ここにいる。」
「冨岡さんにお尋ねしたいことがありまして…」
私は、彼に向かって歩み寄り、尋ねた。
「あなたは…なぜ、自分を柱ではない、とおっしゃるのですか?」
私の言葉に、彼は何も答えなかった。しかし、その瞳は、まるで湖のように揺れているように見えた。
「俺は…妹を鬼にされた男の、悲しみも、怒りも、そして、守りたいという気持ちも…分からない。」
彼は、静かに、そして悲しげにそう言った。
「…それは…」
私は、彼の言葉の意味を理解することができなかった。妹を鬼にされた男とは誰だろうか。入ったばかりの私にはまだ情報が無い。
しかし、彼の悲しみが、私に伝わってくるようだった。
「…冨岡さん。あなたには、守りたいものがあるはずです。鬼を倒して、村人を守ってくれました。それが、あなたの、守りたいという気持ちではないのですか…?」
私の言葉に、彼は何も答えなかった。ただ、静かに、湖面を見つめていた。その瞳には、夜空の月が映り、まるで涙のように輝いているようだった。
「…ふぇ…」
私は、彼の悲しみに触れ、思わず声を漏らした。
彼は、私の声に気づくと、再び私を無視し、歩き出した。しかし、私はもう、彼の背中を見つめるだけではいられなかった。
「…冨岡さん!私も、あなたと一緒に、鬼を倒したいです!」
私の言葉に、彼は立ち止まった。そして、静かに、私を振り返った。
「…お前には、関わるな、と言ったはずだ。」
彼の声は、やはり冷たかった。しかし、私は、彼の瞳の奥に、ほんの一瞬だけ、微かな光が灯ったのを見た気がした。