第2章 頭脳という刀
前田さんという隠が仕立てたその隊服は、遠目には優雅なロングスカートのドレスに見える。しかし、風を受けてひらりと翻った裾の下には、しなやかに脚を動かすためのキュロットスカートが隠されていた。
「お嬢様らしさと、剣士としての実用性。どちらも捨てがたいものでした!」
前田さんは誇らしげにそう言って、仕上がった隊服を差し出した。濃い赤色を基調とした上着には、西洋のドレスを思わせるフリルとレースが繊細にあしらわれ、胸元には隊服には珍しい華やかなコサージュが飾られている。
「…普通でいいのですが…。」
「まぁまぁ着てみてくださいよ!」
彼女が袖を通すと、伸縮性のある特殊な生地が体に吸い付くように馴染み、見た目の美しさからは想像できないほど軽やかで動きやすい。ふんわりと膨らんだパフスリーブは、腕を上げても邪魔にならず、スカート部分に入った深いスリットが、動く度に優雅に揺れた。
最終選別の疲れや前田さんの嗜好の押されで、まぁいいかと考えを放棄してしまった。
そして、鉄穴森さんから受け取った濃い赤色に輝く日輪刀は、私の手にしっくりと馴染んだ。この刀と、私の頭脳があれば、きっと鬼に立ち向かえる。
そして、隊士となった私には、初任務が与えられた。