第2章 頭脳という刀
時間は経ち、四日目の夜。
「まずいまずいまずいまずい…ッ!」
私は、鬼に追われ、森の中を走っていた。
足元には、無惨にも命を落とした同期たちの死体が転がっている。彼らが、私の知る平和な世界を守るために、命を落としたのだ。今までそれに気付かなかった私はなんて能天気だったのだろう、と痛感していた。
その時、一人の少年が、鬼に襲われているのを見つけた。彼は、かつて私に「向いてない」と言った隊士だった。
"お前は、俺たちの気持ちなんて分からないだろう!"
彼の言葉が、私の頭の中で蘇る。私は、彼を見捨てることができなかった。
「愛の呼吸…弐ノ型…愛及屋烏…!」
私は、鬼の攻撃を躱しながら、彼の元へと駆け寄った。そして、鬼の行動を冷静に分析し、鬼が攻撃してこないタイミングを見計らって、彼に声をかけた。
「…今です!早く後ろに下がって!」
彼は、私の言葉に従い、後ろへと下がった。その間に、私は鬼の動きを封じる攻撃を繰り出した。
「愛の呼吸…参ノ型…兼愛無私…!」
私の刀は、鬼の足を的確に斬り裂いた。鬼は、体勢を崩し、その場に倒れ込む。私は、その隙に彼の元へと駆け寄り、刀を構えた。
「大丈夫ですか…!」
「…お前…!なんで…」
彼は、私を見て、驚いたような顔をしていた。
「……私は、あなたには、なれない。でも、あなたを守ることはできる。あなたたちのおかげで、私は、私の戦い方を見つけられたから…!」
私の言葉に、彼は何も答えなかった。
私は、彼を背負い、鬼から逃げた。
そして、七日目の朝、私たちは、生きて最終選別を終えたのだった。