第2章 頭脳という刀
私の心の中には、蜜璃さんのように人を愛する情熱がある。大切な人を守りたいという、強く、そして温かい決意が、私の奥底には確かに存在している。
すると、刀身が熱を帯び始めたかのように感じた。そして、ゆっくりと、しかし確かに色を変え始めた。それは、静かな色ではなかった。秘めたる情熱が溢れ出すような、鮮やかな色。
刀身は、燃えるような濃い赤色に染まっていった。それは、蜜璃さんの恋の色を受け継ぎながらも、私の内に秘めた決意と情熱を表すような、深く、強い赤色だった。
「…見事です。情熱的な色だ…」
「きゃー!私、こんな深い赤の日輪刀見たことないわ!」
鉄穴森さんは、私の刀を静かに見つめて満足げに頷き、蜜璃さんは高揚しているようだった。
私は、自分の刀を静かに見つめた。この濃い赤色の刀は、私の「愛の呼吸」と、大切な人を守りたいという強い意志を象徴している。
「あの…鉄穴森さん。」
私は、意を決して尋ねた。
「刀が色づくということは、私が鬼殺隊士として、戦う資格があるということなのでしょうか…?」
私の言葉に、鉄穴森さんは静かに首を横に振った。
「いいえ。そうではありません。日輪刀は、誰でも握れば色が変わります。しかし、その色が、何を意味するかは…持ち主の心ひとつです。」
彼の言葉は、私の心を深く考えさせた。
「あなたの日輪刀が、これほどまでに情熱的な赤色に染まったのは、甘露寺様から受け継いだ『恋』、そして、あなたの内に秘められた、大切な人を守りたいという強い『愛』が、そうさせたのでしょう。刀はただの道具です。それをどう使うか、どう活かすかは、あなた次第です。」
私は、鉄穴森さんの言葉を胸に刻んだ。刀が色づいたからといって、鬼殺隊士としての資格が与えられるわけではない。
その資格は、私がこれから、この刀と、この呼吸と、そして私の頭脳と判断力を使って、どれだけ人を守れるか。その行動によって証明されていくのだ。
私は、再び自分の刀を強く握りしめた。剣の才能は人並み以下かもしれない。それでも、この刀と、私の頭脳があれば、きっと鬼に立ち向かえる。
この刀とともに、私は最終選別へと向かう。
「…頑張ってね。知令ちゃん。」