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【鬼滅の刃】屋烏の愛

第14章 簪【宇髄編 第1話】


傷が治り、体力も回復した知令。

その日の蝶屋敷の空気は、いつもより少し張り詰めていた。知令が稽古道具を片付けていると、窓の外から小さな影が差し込んだ。

「──届いたぞ。」

窓の外に止まったのは、鎹鴉の銀次郎だった。鋭い目でこちらを見つめ、紙片を落とすように伝達してくる。
「チッ…那田蜘蛛山──任務だ。知令、急ぎ、向かえ。」

知令は手を止め、紙片を受け取る。封筒の感触から、任務の緊急性が伝わる。心臓が少し早鐘を打つ。

その横で、宇髄は腕を組み、軽く眉を寄せながら知令の様子を見ていた。
「……行くのか?」

知令は封筒を握りしめ、うなずく。

「はい。隊の指令ですから……行かなくては。」

宇髄は軽くため息をつき、床に座り込む知令に声をかける。

「……俺は別用がある。お前さん、一人で向かうしかねぇな。」
「はい。ですが、宇髄さんも一緒じゃないと、不安な部分もあります……」

そう言いかけると、宇髄は鋭く視線を返す。

「不安か?……お前さんのことだ、任務の指示が届いた瞬間から心は動き出してるはずだ。俺は見てる。お前がどんなに準備して、どんなに考えて、戦うかをな。」

知令の胸は、彼の言葉にぎゅっと押される。背筋が自然と伸び、目に覚悟の光が宿る。

「……わかりました。宇髄さん、ありがとうございます。宇髄さんに見てもらえると思うと、力が湧きます。」

宇髄は口角をわずかに上げ、知令の頭を乱暴に撫でる。

「……おい、そんな泣きそうな顔すんなよ。任務に行かねぇなら、後ろ髪引っ張ってやろうと思ってたが…行けるだろ。お前の力で、あいつらを斬れ。」

知令は握った封筒を胸に抱え、深呼吸する。宇髄の手の温もりは、少しだけ自信をくれる。

「はい。必ず……任務を全うします。」

銀次郎の鎹鴉が小さく鳴き、知令の耳に届く。任務の時間が迫っていることを告げるように、空気が微かに震えた。

「…行け。のろま。」

宇髄は短く告げ、背中を向けた。知令は小さくうなずき、深い呼吸の後、任務地へと歩き出す。

宇髄はその後ろ姿を見つめながら、声には出さず心の中で呟いた。

(……お前の成長、ちゃんと見てるぞ。)
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