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【鬼滅の刃】屋烏の愛

第13章 気まぐれ【不死川編 第1話】


森の奥、蜘蛛の糸に絡みつく鬼たちを前に、知令の呼吸は少しずつ乱れ始めた。息が荒くなり、手首に力が入りすぎて刀がわずかに震む。

「…一匹残らず……」

胸の奥であの日の言葉を反芻し、涙をこらえながら刀を握り直す。だが、鬼たちは執拗に襲いかかり、視界の端で捕らえきれない速さで動く。

──そのとき、森のざわめきと共に、見覚えのある声が響いた。

「知令!大丈夫か!」

声の主は、炭治郎だ。濃紺の羽織と日輪刀を携え、全身に力を漲らせながら駆け寄る。知令は一瞬驚き、そして心の奥でほっと安堵する。

「炭治郎さん……!」
小さく息を吐き、彼女は刀を構え直す。

炭治郎は目を細め、鬼の動きを一瞬で見極める。二人は無言で呼吸を合わせ、攻撃のパターンを交互に読んでいく。

鬼が飛びかかる──知令は一瞬遅れたが、炭治郎の動きが呼吸の隙を作り、彼女は的確に斬撃を当てる。

「よし……! そのまま!」
炭治郎の声が知令の背中を押す。自然と心臓の奥が熱くなり、思わず笑みがこぼれる。

「はわわ……炭治郎さん、すごい……」
「知令もすごいよ! 頭も心も全部使って、ちゃんと戦えてる!」

二人の息が合い、鬼たちは次第に追い詰められていく。刀の閃光と木々を裂く足音が森に響き渡る。知令は自分の頭脳が武器になっていることを実感し、冷静さと感情の絶妙なバランスを保ちながら戦う。

そして、最奥に立ちはだかるのは──累。
蜘蛛の糸が無数に絡まり、威圧的な姿で二人を睨む。

「……やっと来たか。」
累の声は低く、重く、森中に響く。知令は一瞬息を呑むが、炭治郎の力強い視線を受け、踏みとどまった。

「知令……俺と一緒に倒すんだ!」
「はい、炭治郎さん……!」

互いに頷き、二人は呼吸を合わせて累に挑む。刀の音が交錯し、互いの動きが完璧に噛み合う。累の糸を切り裂きながら、知令は不死川の言葉と炭治郎の信頼を胸に、全力で攻撃を繰り出した。

──その戦いは、孤独だった知令にとって、新たな信頼と絆の芽生えを感じさせる瞬間でもあった。
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