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【鬼滅の刃】屋烏の愛

第13章 気まぐれ【不死川編 第1話】


那田蜘蛛山に差し込む朝の光は、森の中でさえ鈍く重たく感じられた。
知令は静かに足を踏み入れる。日輪刀を握りしめ、心の中で不死川の言葉を反芻する。

"……行ってこい。一匹残らず、ぶっ殺して来い"

その荒々しい言葉が、今は心強い支えとなっていた。
はわわ、と小さく息を漏らしながらも、知令の手は迷いなく刀を振るう。相手は下弦の鬼たち。個々の動きを冷静に分析し、瞬時に攻撃の軌道と隙を読み取る。

森の奥深く、蜘蛛の巣が垂れ下がる場所で、知令は一匹目の鬼と対峙する。眼光を鋭く光らせ、体を低く構えた。鬼が跳びかかる瞬間、彼女は頭の中で動きを数パターン想定し、無駄のない一撃で切り伏せた。

「……不死川さん……私、ちゃんとできてるかな…。」

小声で呟きながら、胸の奥に熱いものがこみ上げる。あの時の約束、信頼、そして守ってくれる存在の意識が、彼女の刀に力を与えていた。

森の奥では、鬼の声が響き渡る。知令は脇に蹴り上げた枝を払い、次々と敵を分析していく。孤独な戦いだが、思考の速度が彼女の武器となる。刀の軌跡に感情は混じることなく、ただ冷静な判断と確かな狙いがある。

しかし、深い森の奥で、知令の前に立ちはだかったのは、累の手下──蜘蛛の糸に絡みつく複数の鬼たちだった。

「……ここからが、本番です……」

知令は歯を食いしばり、森の中に響く鬼の咆哮に応えるように刀を振るう。
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