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【鬼滅の刃】屋烏の愛

第13章 気まぐれ【不死川編 第1話】


夕刻の稽古場。
竹刀の音が乾いた空気に鋭く響いた。
知令の姿は、まだほんのり線の細さを残していたが、目だけは真っ直ぐに燃えていた。

「……立て。まだ終わっちゃいねぇだろ。」

実弥の声音は荒っぽく響く。だが、竹刀を握る手はほんの僅かに震えていた。無理をしていないか───それが気になって仕方なかった。

知令は額の汗をぬぐい、唇を噛みしめながら立ち上がる。

「……まだまだ。もう一度お願いします!」

その気迫に、実弥は口元を歪める。

「へっ……いい面してんな。なら来い。」

鋭い竹刀の打ち合い。
実弥の力強い一撃を受け止めながら、知令は必死に食らいつく。だが、わずかに足がもつれた。

「あっ――!」

倒れかけた瞬間、背中を支えるように強い腕が伸びる。

「バカが……まだ怪我ァ治りきっちゃいねぇんだろ。」

荒い声に隠された焦燥。
至近距離で感じる体温に、知令の胸がどきりと跳ねた。

「……だ、大丈夫です。私……もっと強くなりたいから」
「……チッ。……好きにしろ。だが、無茶はさせねぇ。」

吐き捨てるような言葉とは裏腹に、実弥の手はしばらく離れなかった。
不器用な優しさに、知令の頬はほんのり紅く染まっていた。
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