第13章 気まぐれ【不死川編 第1話】
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屋敷の畳に差し込む陽射しは柔らかく、傷口にまだじんとした痛みを残しながらも、知令は立ち上がった。
家族を奪われた日の激闘から日数が経ち、療養も一区切りついた。動かさなければ疼くだけだった体が、ようやく刀を握れるほどに回復してきたのだ。
だが、縁側から見上げた空気の張り詰め具合で、すぐにわかった。
───来ている。
「おい、出てこいや。」
声は鋭く、だがどこか待ちわびた色が滲んでいた。
縁側の向こう、不死川実弥が立っていた。腕を組み、片目で鋭く睨みつけている。白い髪を陽に照らし、鍛え抜かれた体からは鬼殺隊最強格の気配が溢れている。
「……っ、不死川さん」
知令は思わず身を正す。まだ本調子ではない。けれど、目を逸らすことだけはしたくなかった。
「チッ、ヒヨっ子みてぇな顔してんな。」
鼻で笑いながらも、実弥は懐から包帯を引き抜き、無造作に投げて寄越した。
「血ィ滲むのは見たくねぇ。巻いとけ。」
「ふぇっ?!…あ、ありがとうございます!」
素直に受け取ると、彼は目を逸らして庭に降りる。
「稽古だ。体が動くなら、とっとと来い。」
知令の胸が跳ねた。
療養を終えて最初に立ち会う相手が、不死川実弥。呼吸も、剣筋も、全てが鋭利で容赦ない。だけど、その眼差しの底に───ただの敵意ではない何かが見えた。
刀を握り、庭に降り立つ。
実弥が一歩前に出ると、ただ空気が震えるようだった。
「鬼を斬る力が欲しいんだろ。だったら、俺に食らいついてみろ。」
「……はい!」
知令は全身に力を込め、呼吸を整えた。
初めての共同稽古が、いま始まる。